文字:
20190604Z_0
- 2019/06/04◥
- SYSTEM◥
- 19:32:48
- 様が入室しました。
- ◥
- 20:58:15
- NoPlanでだらだらやっていくか。
- 21:01:07
-
- 21:08:38
- 故郷の事はあまり覚えてはいない。そう答えたのは殆どが本当で、ほんの一部だけは嘘になる。
- 21:14:18
- 故郷はダイアンからそう遠くない場所にあったごくごく普通の農村で。自分はその村の農夫の息子として生まれた。そういった情報については、言葉にした通り。大分朧気だ。それが、幼さが故なのか。それとも、子供心に住み慣れた故郷が蛮族によって奪われるという出来事がショックだったからか。理由は判然都はしないが。
- 21:22:29
- 故郷は決して豊かと言う程ではなかったが、平和で穏やかな時間が流れる場所だった。何の疑いもなく、自分も父の跡を継いで畑を耕し、その内に家庭を持って一生を終えるのだろう、と。そう思っていた――はずだ。
- 21:29:00
- それらの何一つとして特別さのない当たり前の幸福を、一瞬にして奪われた。その事に対する、怒りと、憎しみと、諦観と。そういった薄暗い感情で心が満たされて、代わりに体中から生命としての活動する為に必要な、なにもかもが少しずつ零れ落ちて行く。その時の感覚だけは、なんとなく。だけれども、魂に染みついてしまったように、しっかりと覚えている。――忘れられないだけなのかもしれないけれども。
- 21:51:46
- 一つの農村が蛮族の群れの手に依って滅んだ。そんな、この世界になら何処にだって転がっているようなよくある話だが、こと死に瀕した自分を文字通りに拾った者がいたという所からは、そんな何処か他人事じみた『よくある話』からは外れ始める。そう、たまにはある話、くらいには。
- 22:03:17
- 自分を拾ったのは、不健康そうなナイトメアの女だった。見知らぬベッドで目を覚まし、状況を把握できずに途惑う自分に対して。『生き残りがいるとは思わなかったが、たまたま目に入ったので助けてやった』『助かったのはお前だけだ』『怪我が治るまでは面倒をみてやる』などと、ポンポンと。今にして思えば、とても故郷を失ったばかりの子供に対して掛けるべきだとは思えないような事実だけをいくつも突き付けてきたし、当然の様にその当時の自分は、それらの言葉を受け止めきる事は出来なかった。
- 22:12:57
- 雑な手料理と怪しい魔法薬を与えられて、怖いくらいに身体は楽になるのが早かった。ベッドから立ち上がれるようになって、窓から外を見て。全く知らない光景が広がっているのを自分の目で確かめて、ようやく。自分が何もかもを失って、ただ独りになったのだ、という事を何となく理解した。
- 22:14:45
- そうやって少しでも動けるようになって幾日か経ち、ベッドで安静にする必要もなくなった頃。女が自分を呼び付けて用事があると告げてきた。幼心に、出て行けと言われるのだろうかとか、これからどうしたらいいんだろうと不安になったのを覚えている。
- 22:17:34
- そんな不安を覚えている子供に対して女は、『雑用くらいはこなして貰う』『自分の事は師匠とでも呼べばいい』などと告げると、明らかに新しいとわかる子供用の着替えなどを押し付けてきた。
- 22:21:21
- 困惑し、『怪我が治ったら追い出されるのではなかったのか』と尋ねると。女は、『だからこうやって面倒をみてやろうとしているんだ』と返してきた。怪我なら治ったはずだけれどと思いつつ、だからといって放り出されても困る。当時の僕は、黙って何度も頷いた。機嫌を損ねないように。 ――今なら、発言の意味も意図もわかるけれども。
- 22:27:02
- 女の元での生活が始まった。
- 22:32:22
- 女は高位の魔導士だった。自分に対するお目付役として付けられたのが、自意識を持った使い魔であった辺りからも実力の程は察せるというものだ。当時は気にしてもいなかったが。
- 22:42:13
- 忙しい日が続いた。雑用くらいは、と言いながら、本当に雑用の全てを押し付けられた。それに加えてマナや薬品の取り扱いなんかもある程度は仕込まれた。
- 22:44:07
- 忙しくて忙しくて目が回りそうで。おかげで、余計なことを考える時間なんて殆どなかった。そういう意味では感謝している。狙ってそうなるようにしてくれたのか、それとも単なる素だったのか。僕は、後者だと思っている。
- 22:47:59
- ……そうやって日が経ち、そういった新しい日常にも慣れて。自分の境遇も少しは受け入れ始めて、身体も成長し始めた。その頃に、望むのならば魔術の類も仕込んでやると提案されて。一も二もなく頷いた。
- 22:50:16
- ――結論から言えば、自分にはまるっきり才能のさの字もなかったのだけれど。
- 22:53:21
- まずは一番初歩の初歩からだと言われて教わり始め、さあやってみろ、と当然のように言われた時点で意味がわからなかった。『自分は出来た』等と当然の宣われれば、憎々しい気分すら浮かんだが、それでも出来ない物は出来なくて。終いには、狩りの為に使っていた弓を示されて『教えてもないが、あっちの方が余程に筋が良い』とまで言われてしまった。
- 22:58:05
- ただそれで諦めようという気持ちにもなれなくて。余裕が出来るようになった雑用の合間に、教わった事をひとつひとつ、仕組みと理屈を確認し直して、幾日も掛けて漸くに。蝋燭の火ほどの【明かり】を点けることが出来た時には声も出ないほどに嬉しかった事を思い出せる。
- 23:05:14
- 同時に。それを喜び勇んで見せに向かった師が、数日前の事をすっかり忘れたように『それはなんだ』とでも言いたげにしていた事も、今でも少し根に持っている。
- 23:16:12
- 『才能はないが根性はあるらしい』と認められ、それじゃあ次はこれだと。課題が追加されて行き、余裕の出来ていた筈の日常はまた忙しさで埋まっていった。忙しさの質も、心の持ちようも。生活の始まった最初と比べれば、随分と様変わりしていたけれど。
- 23:18:44
- ……結局の所、幾つかを教わった時点で魔術よりはまだしも操霊術の方が適性がマシだと判断されたらしく、そちらに重点を置いて教えを受ける事となった。
- 23:23:42
- あくまでもマシであって、決して出来が良いどころかはっきりと悪い生徒だったのだろう。魔術を『使える』ようにはなっても、魔道を究めるどころか一流と呼ばれる域にすら到りつくのには寿命が足りない、とまで告げられて。師匠がそういうのなら、そうなのだろうと。諦めた、というよりは納得をしたものだ。それでも面倒をみてくれた事には、本当に感謝をしている。
- 23:42:34
- そんな新しい日常がまた、何年か続いた。子供は少年になり、少年は青年と呼べるまでに成長した。
- 23:50:41
- 生活と成長する中で、蛮族の類に脅かされる不幸を少しでも減らす為に、出来ることをしたいと思い始めて。ある程度は意を決して、師匠へとその意志を告げれば、返ってきたのはただ一言。
- 23:51:13
- 「──ま、好きにすればいいさね」
- 23:55:09
-
- 23:55:10
-
- 23:57:15
- ――パシャン
- 2019/06/05◥
- ライナス◥
- 00:01:07
- 「――……っ、と」 深く沈んでいた物思いを引き戻したのは、水音と。何よりもひっかけられた水の冷たさだった。
- 男たち◥
- 00:04:23
- 「おっと、悪いな、手元がすべっちまった」 多分に悪意というか、とても言葉通りとは思えないニュアンスの謝罪が耳に入る。
- ◥
- 00:06:00
- 〈星の標〉ではなく、もう少し猥雑な酒場で食事と酒とを摂っていた、そんな夜だった。
- ライナス◥
- 00:07:04
- 「……」 視線を向ければ、何人かの冒険者風の男達がにやにやと笑いながらこちらを見ていた。
- ◥
- 00:09:48
- 騒動の気配を察したのか、慌てた様子でタオルを持ってきたウェイトレスにお礼を言いながら、『なんでもない』と薄く笑って告げる。
- ライナス◥
- 00:11:30
- 「もう、食べ終えてぼうってしていた所だしね。そろそろ出ようかと思っていた所だしね。そんなに、気にしなくて構わないさ」 言外に、騒ぎを起こすつもりはないから安心して欲しい、と。そうウェイトレスに告げながら、席を立って。
- 男たち◥
- 00:13:34
- 「なんだぁ、アイツ。スカしやがって……」 そんな様子に軽く鼻白む者もいたが。同席していた男のひとりは、そうではなかったらしい。
- 00:23:00
- 「“魔剣”やら“宝剣”がいなきゃ、喧嘩も買えないってか? “打ち粉”野郎は」 逆にそれが面白くなかったらしく、更に挑発をするように言葉を投げかける。
- ライナス◥
- 00:24:13
- 「――……」 すい、と視線を彼らに向ければ。やるのか、とばかりに身構える様子が目に入る。
- 00:25:02
- が、すぐに視線をウェイトレスへと戻して。 「会計を頼めるかな」
- ◥
- 00:25:50
- 途惑う様子のウェイトレスに小さく苦笑をして、『迷惑料だ』と言いながら、実際に飲み食いした分より少し多めの金額を渡して店を出る。
- 男たち◥
- 00:27:14
- 「けっ腰抜けが」「まあまあ」「飲み直そうぜ、酔いが醒めちまった」 去り際にそんな会話が耳に入る。
- ライナス◥
- 00:31:15
- 「……やれやれ」 店を出て、ふう、と一息吐いて苦笑する。確か彼らは、別の冒険者支部の長剣クラスの冒険者、だったろうか。そろそろ大剣の試験も受けようか、とそんな段階だったように思う。
- 00:32:15
- そんな彼らからしてみれば、『面白くない』のは当然だろう。ゆっくりと歩き出しながら、そんな風に考える。
- 00:36:37
- 自分を慰める為の誇張抜きに、『当然だ』とも納得が出来る。
- 00:37:18
- なにせ。彼らの方が、自分より余程腕前は上なのだから。
- 00:38:58
- 自分より腕前として劣る奴が、よっぽどに高名な冒険者に気に入られて、それで重用されている。そう見られているのだ、という事の自覚くらいは、いやでも持とうというものだ。
- 00:45:10
- 唯一まだマシに身についていると言える斥候技術にしても、それこそ彼らにしてみれば、手慰み程度の物に過ぎない。
- 00:47:31
- 弓術にしたって、どうにか狙いを澄まして一撃を通して漸く及第点、といったところだろう。
- 00:52:08
- それ以外は必死に寄せ集めて身に付けて、それでどうにか体裁を取り繕っている、そんな塩梅だ。
- 00:59:30
- ――だから?
- 01:03:49
- それがどうしたというのだろうか。誰にどう見られた所で。実力が足りていない所で。それで自分が、自分になら出来る事を実行する事を妨げられる謂われはない。
- 01:07:02
- 足りていないのであれば、他から持ってきて埋めてやればいい。及第点が出せるのであれば、利用価値はあるはずだ。手慰み程度の技術であったとしても、自分がそれを賄えば他に注力させることだって出来る。ただ、やれることをやるだけだ。 ――それこそ、徹底的に。そうすれば、少しでも世の中の『不幸』やらは減ってくれるだろう。少なくとも、そうしないよりは、確実に。
- 01:08:29
- ……とはいっても。こうやって実際に、食事に出る度に絡まれるのも面倒が過ぎるのは事実でもある。見知った顔の多い、星の標の付近での生活を主にするのが得策ではあるだろうが。
- 01:10:51
- 「……ああ」 そうだ、と。少し意地の悪い思い付きに、口の端を上げる。それこそ実際に、魔剣でも連れていってやれば――さて、それでも彼らはこちらに喧嘩を売ってくるのだろうか、なんて。想像するだけで実行する気はないが、それだけで少しばかり楽しかった、というと性格が悪いだろうか。
- 01:12:24
- そんな風に想像しながら帰途へと付いて。
- 01:13:03
- 「……?」 おや、と。自分の気晴らしに、疑問を覚える。
- 01:14:37
- 改めて、小さく苦笑しながら。帰路へとついたのだった。
- SYSTEM◥
- 01:14:40
- 様が退室しました。
- ◥
-
発言統計 |
| 33回 | 56.9% | 3339文字 | 65.3% |
その他(NPC) | 25回 | 43.1% | 1771文字 | 34.7% |
合計 | 58回 | 5110文字 |