ワールド/イルスファール王国
概要†
ケルディオン大陸中部リアン地方東部、イルスファール王国。
そこが、私たちの冒険の舞台です。
王国成立の経緯†
イルスファールは、元々は魔動機文明時代に存在した比較的大規模な城郭都市です。
〈大破局〉時の蛮族の侵攻に際し、リアン地方東部の諸都市はイルスファールを含めほぼ全てが失陥し、人族の領域は地方東部と西部の境界に位置する防壁“ルシスの大壁”にまで後退し、以降東部地域は蛮族に占領されたままでした。
転機となるのは約100年前、当時この地方でカリスマ的名声を博していた冒険者リチャードが、冒険者や傭兵を中心に軍団を組織し、東部での反攻計画を始動。連勝に連勝を重ね、ついには〈ユスの戦い〉において地方東部を支配していた蛮族軍の首魁を討ち破ったことに始まります。
指導者を失った蛮族軍は統制を失い、その後も敗北を重ねた末に南方のル・ガウ平原まで追いやられ、リアン地方東部は人族の領域として回復しました。
リチャードは東部地方の都市で比較的被害が少なく、交通の要衝となり得るイルスファールを復興、建国することを宣言し、リチャード・イルスファールと名乗ります。
新たな英雄の偉業は喝采をもって迎えられ、ここにイルスファール王国が誕生しました。
以後百年間、王国は紆余曲折を経ながらも発展を続けており、リアン地方東部の広範囲を影響下に置いています。
“王都”イルスファール†
王都イルスファールは魔動機文明時代の都市を下地にした城郭都市であり、周囲は堅牢な防壁で覆われています。
イルスファール王国は単一の都市国家として成立しましたが、発展に伴い周囲にも所属都市が興ったため、自然と王都と呼ばれる様になりました。
建物の様式などは魔動機文明時代の雰囲気を色濃く残し、上下水道や街灯などのインフラ設備もマギテック協会により復旧、維持されているため、整然とした街並みをしています。
ユス河の支流が街の中を流れることから、水不足に陥ることも無く、居住には理想的な環境と言えるでしょう。
一定の区画ごとに似たような施設が集まる傾向があり、通常の住宅や一般的な商店が建ち並ぶ各住宅街のほかに、王城を中心に省庁や軍官舎等の重要施設が集中する省庁街、大規模な商館が集まり活気を見せる商業街、金床を叩く音や職人の怒声の絶えない工房街、金持ちの多く住む高級街、夜の遊び場である花街などが存在し、それぞれ全く違った様相を見せます。
地価は基本的に街の中心に行くほど高く、外周に行くにつれ安くなる傾向にあります。
今後も発展が期待されていることから移住者は後を絶たず、人口増加で土地は不足しがであり、3階建以上の高層住宅も多く存在します。
現在は防壁外に家を建てる者も出始めており、安全性の確保とスラム化の防止のために新たな防壁を建築中です。
王国の方針†
リアン地方東部は〈大破局〉以降、長らく蛮族に占領されていたこともあり、未だに大分部が手付かずの土地となっています。
以前は多くの都市が存在しましたが、その殆どは破壊され、数百年経った今では緑に飲み込まれてしまった街や村も珍しくありません。
それらを復興させる、あるいは開拓によって街や村を新たに興し、勢力を拡大していくことが王国の基本方針となっています。
とは言え、安全が保証されている地域はまだまだ一部であり、潜伏している蛮族や危険な動物などに対処するためにも、冒険者の存在は欠かせません。
また、王国は魔動機術や魔法技術の復興にも力を入れており、遺跡の発掘調査、鉄道路の敷設の護衛など、冒険者に期待される役割は多岐に及んでいます。
政治†
イルスファール王国はその名の通り君主制国家です。
ナイトメアである建国王リチャードが、現在も国を統治しています。
政務は、最終決定権を持つ王を筆頭とし、軍務、国務、内務、司法、財務など各部門を担当する大臣を中心に執り行われています。
大臣の任命権は王が有し、その下の省庁にあっては官僚制を敷いており、内政から軍事に至るまで、役職は能力主義的なものです。
優秀であれば種族や出自に関わらず優遇されることが、この国に多くの人が集まる要因の一つにもなっています。
建国以来の王であるリチャードがナイトメアであることから、公に種族的なもので差別を受けることはまず無いでしょう。
貴族†
イルスファール王国には貴族も存在します。
貴族とは即ち領主であり、自らの力で新たな土地の開拓を成し遂げ、それを独力で防衛し王国に税を納める力を持つに至った者です。
彼らには納税と戦時の軍役の義務がありますが、領地に対する裁量権が認められます(イメージとしては我々の世界での戦国時代の武将が近いでしょう)。
また、領主はその立場に相応しい高潔な立ち居振る舞いが要求されます。
それが成し遂げられるのであれば、新たに領地を得て貴族となることも可能です。
貴族は一概に「領土名+伯」の名で呼ばれ、それ以外に爵位は存在しません(いわゆる公侯伯子男の制度がありません)。
ホリス島を治める“ホリス伯”トバイアスが、貴族の代表的な例です。
軍制†
イルスファールは魔動機文明の軍制を模範としており、指揮命令系統が分かりやすくなっています。
代表的なものとして、少数の隊員を取りまとめる小隊長、それを取りまとめる中隊長、さらにそれを取りまとめる大隊長、総括者たる将軍が存在します(軍内にはさらに細かな序列がありますが、煩雑な為割愛します)。
領土伯は独自の軍を持つことが許されていますが、本国と同様の軍制を導入しています。
騎士位†
イルスファールにも騎士と呼ばれる者は存在します。
それは軍など戦いに関係する者のうち、功績と人柄で評価され、他の模範となる者として叙任された者であり、一代限りの名誉称号です。
そのため、軍内の序列とは直結していません。
冒険者ギルド〈星の標〉†
イルスファール王国に存在する冒険者ギルド支部(冒険者の店)の中で、幾つかある大規模な店のうちの一つがこの〈星の標〉です。
建国当初からの流れを組んでおり、歴史が長い故にノウハウが豊富で、冒険者、依頼者相互に対するケアが厚いことで人気があります。
初心者からベテランまでの幅広い層の冒険者が多数所属しており、パーティが組みやすい事でも知られています。
店舗の規模自体も大きく、1階は冒険者ギルド支部兼酒場、2階と3階に宿泊所があり、広い裏庭を備えます。
店を束ねている元冒険者ガルバ・ベイツの下、多数の店員が働いています。
マギテック協会“ビッグボックス”†
首都南西部に突き出すようにそびえ立つ防壁の内側に佇む巨大な方形の建造物、それがマギテック協会イルスファール支部、通称“ビッグボックス”です。
イルスファール王国成立以降、首都の復興と整備に多大な貢献を果たし、現在でも都市機能の維持・充実に務めていることから、市民からは大きな評価を受けています。
国の方針として魔動機文明時代の技術の復興があることから、資金や人材面においては国からの強力なバックアップを受けており、才能溢れる協会員達が精力的に様々な魔動機を作っています。
この支部の座右の銘は“チャレンジ精神”であり、中にはおかしな物が作り上げられ騒動を起こす事も多いのですが、国としても昔から好きに研究させる方針のため、近隣住民の反応は「またか」と慣れたものです。
王国鉄道公社†
イルスファール王国では近年、リアン島から冒険者が持ち帰った技術を利用し、マギテック協会の手によって魔動列車が復元され、王国の主要都市を結ぶ鉄道路を開通させる大成果を上げました。
この鉄道の運営にあたり王国鉄道公社が設立されましたが、その拠点及び首都の駅舎は立地の利便性や列車の整備の観点から、マギテック協会の敷地に設けられています。
最近では国外に向けた路線も建設されており、王国の発展の一端を担っています。
公社と協会は密接な関係であり、兼務の者も多数在籍していることから、おかしな物が持ち込まれることもある様です。
下記とその他に営業部門、整備部門などが存在します。人数比は営業・整備部門が多数を占め、それに続いて警備部門・輜重部門があり、広報部門は比較的少数となっています。
王国鉄道公社警備隊†
王国鉄道公社の設立に関わったとされる、アルフレイム大陸からの流れ者が考案した部門です。
キングスフォール鉄道警察、通称“鉄警”の基本的なノウハウなどが【キングスレイ式近接銃撃術】を始めとしてイルスファールにより適合する形で再編されています。
少数ながら上級手旗信号士も存在しており、また“ビッグボックス”製の武装列車などの運用も任されています。
王国鉄道公社警備隊、あるいは鉄道警備隊と呼ばれる事があります。
王国鉄道公社輜重隊†
上級手旗信号士や鉄道警備隊の補給部門、それが転じて実戦部隊の後方作戦部隊として位置づけられている組織です。
かつての補給部隊が現在はそれ以外にも事故や襲撃に巻き込まれた者の怪我の治療や各種ケアを行っている裏方であり、後方部門のエキスパートたちが集まる部門となっています。
上級手旗信号士よりも評価や格は落ちるものの、花形部署を支える部門としての知名度は低くはありません。
王国鉄道公社輜重隊、あるいは鉄道輜重隊と呼ばれる事があります。
王国鉄道公社訓練校†
王国鉄道公社鉄道警備隊の下部組織であり、見習い達が所属する部門です。
未来の営業隊、警備隊、輜重隊、ひいては上級手旗信号士・武装機関士となるべく学ぶ者達が所属しており、それぞれのカリキュラムに従って教練に励んでいます。
卒業までに要する年数などは様々で、能力に応じた時間をかけて卒業し、上記の部隊或いは公社内の別部署に参加する者が殆どです。
王国鉄道公社訓練校、あるいはアカデミーと呼ばれる事があります。
鉄道料金表†
王都 | デライラ | ヴァンス | ダイアン | ユディス | ドラス | |
---|---|---|---|---|---|---|
王都 | ― | 50G | 100G | 50G | 150G | 100G |
デライラ | 50G | ― | 50G | 100G | 200G | 150G |
ヴァンス | 100G | 50G | ─ | 150G | 250G | 200G |
ダイアン | 50G | 100G | 150G | ― | 100G | 150G |
ユディス | 150G | 200G | 250G | 100G | ― | 250G |
ドラス | 100G | 150G | 200G | 150G | 250G | ─ |
※二等車の場合
一等車=倍 三等車=半額
軍務等、公務の場合は二等車無料
魔術師ギルド“夢幻の塔”†
王都の一角に設けられた小さな林の中に佇む一本の塔、“夢幻の塔”あるいは単に“ザ・タワー”と呼ばれるそれが、魔術師ギルドイルスファール支部です。
内部は外見からは想像できない程に広く、立派な設備を有しており、初めて訪れた者を驚かせます。
というのもこの塔の正体は、「突き立てた地に、内部をある程度自在に拡張できる塔を生み出す」という能力を持つ規格外の魔剣だからです。
この支部の設立はイルスファール王国成立とほぼ同時です。
当時、建国に協力した魔術師ギルドの魔術師達が、国の発展を支えるためにこの地に留まって新たに支部を開いたことに始まり、以降その理念を受け継ぎ運営されています。
その様な経緯からこの魔術師ギルドは他国のそれと比べかなり開放的であり、施設の一部を図書館として公開しているなど親しみ易いことから、王都の民にはマギテック協会の魔法使い版程度に認識されています。
ちなみに、魔術師ギルドの敷地は林と言っても緑化公園の様なものなので、自由に出入りすることが可能です。
近年では、ギルドに所属する魔術師が持ち回りで授業を行う入門者向けの教育部門を設立して、人材の発掘、育成も行っています。
従来の徒弟制度に比べて学べる内容は大分薄くなりますが、より気軽に魔術を学べる事からなかなか好評な様です。
(それでも、魔法の才能が全く無ければ弾かれてしまいますし、授業料は必要となりますが)
遺跡ギルド“星屑”†
イルスファール王国の遺跡ギルドは、王都の花街の一角にひっそり佇む建物に居を構えています。
表向き遺跡の遺産の買取や流通を行っていますが、他国の遺跡ギルドの多くがそうであるように、実態は盗賊ギルドです。
主に下町や花街の自警団的な役割を有し、揉め事の仲裁や行き過ぎたならず者の排除など、裏社会の秩序を維持しています。
表社会に馴染めない食い詰め者などを糾合する役割も持っており、特殊な技能を持つ人材が在籍しています。
この国の遺跡(盗賊)ギルドは、どうしても発生する裏社会に一定のルールを与えるため、国も半ば黙認する形で発足した経緯があり、その性質は他国のそれと比べれば穏やかで“上手くやっている”と言えます。(もちろん、犯罪が発覚すれば国は厳正に対処します。)
ただし、怒らせると非常に怖い組織なことには間違いありません。
ライダーギルド†
イルスファール王国のライダーギルドは、本店が商業区に構えられており、営業所が北西門と南門付近に存在します。
いずれにおいても騎獣は〈騎獣縮小の札〉で彫像化した状態で貸し出され、返却後も彫像化され保管されています。
キャリッジなど、縮小出来ない部分については営業所での貸出しになっています。
また、王都の他にも、各都市に支店が存在し、国内での騎獣の貸し出し記録は共有されています。
これらの騎獣を育てる牧場は“農業都市”デライラ郊外に存在しています。
王国内のバルバロス†
イルスファール王国には、(コボルドを除いて)極少数ながら所属する友好蛮族が存在します。
彼らは何らかの事情で人族社会で生きることを決め、王国にそれを認められた者達です。
人目の問題や、守りの剣の影響もあり、多くは軍属として要塞都市ユディス近辺で活動していますが、場合によっては冒険者として活動していることもあります。
代表的な所属都市†
以下はイルスファール王国に所属する代表的な都市であり、王国の直轄地です。
“農業都市”デライラ†
王都イルスファールの北西、肥沃な土地であるラーグ平原に存在するイルスファール王国の所属都市です。
イルスファール王国の成立以降、王国とリアン地方西部との中継地点の一つとして復興し、発展してきました。
周辺に豊かで広大な農地を抱え、近年ではイルスファール王国の諸都市の穀物需要の多くが、デライラ周辺地域で賄われるようになっています。
その重要性から王都から鉄道が敷かれており、農作物や人員を迅速に輸送できる体制となっています。
“要塞都市”ユディス†
イルスファール王国の勢力の最南端であり、最前線に位置する都です。
軍団が駐留し、幾重にも建ち並んだ強固な防壁が南方への睨みを効かせています。
王都との間には逸早く鉄道が敷かれ、兵員を迅速に輸送することが可能となっています。
この街と南方のル・ガウ平原との間は“無足の荒野”と呼ばれ、人族、蛮族共に拠点の存在しない緩衝地帯です。
とは言え蛮族との小競り合いは絶えず、いつ大規模な攻撃があるやも知れないことから、この街の軍指揮官には大きな自由裁量権が与えられています。
リアン島の調査に赴く冒険者も利用することがあるでしょう。
ユディス南方の砦†
要塞都市ユディスの南には、ユディスの守りを確かなものとする為に幾つもの砦が設けられています。
代表的な砦は、「グラティサント」「クルイーク」「バルトロメオ」「ラグノ」の四つが挙げられます。
また、他にも蛮族勢力から奪還した「カストレ」という小規模な要塞都市があり、蛮族への睨みを効かせています。
“中継都市”ダイアン†
王都南方、城塞都市ユディスとの間に存在する中継都市です。
ユディスの後詰という側面が強い街であり、ユディスの軍の交代人員のための宿舎や保養所、物資集積所が設けられており、兵士の多い街です。
また、逢魔の森の探索に赴く冒険者が、頻繁にこの街を利用しています。
それらを相手にする店が多数軒を連ねており、王国最大の歓楽街があることでも有名です。
“港湾都市”ジョナス†
王都の西方に位置する港町であり、王国唯一の軍港を備えた都市です。
イルスファール王国周辺の沿岸は、殆どが断崖に面するか遠浅の海で、大型船が立ち入る事が難しくなっていますが、ジョナス近辺は比較的深い水深を持つことから港町として発展しました。
ディニス大鋼国やシラー共和国の港と比べると規模は小さく、寄港する船の数も少ないものの、イルスファール最大の港町として賑わいを見せています。
軍船†
船と言えば帆船ですが、ジョナスの軍港ではガレー船を多く見かけます。
ガレー船は主に多数のオールを漕ぐことによって推進する軍船で、積載能力や航続能力では帆船に劣るものの、行動に風力を必要とせず、小回りが効き、喫水が浅いという特徴を持つため、凪が多く遠浅の海の多いイルスファール近海で軍が使うにはうってつけの船です。
イルスファール軍の代表的なガレー船は“法の栄光”号で、全長50メートルを優に超える特大の重トリレーム(三段櫂船)であり、100名以上の戦闘員を乗せることが出来るほか、大砲も10門以上を備えており、戦闘能力には目を見張る物があります。
“材木の町”ウッズビー†
ダイアンから北に伸びる線路の終点に位置する町です。
ユスの森周辺の開拓村から運ばれる木材の集積地が発展して町となりました。
都市と言えるほどの規模や機能はありませんが、重要な拠点として兵士が駐留しています。
ファティマ†
“調査拠点”ディオニア†
イルスファール王国がリアン島に設けたリアン島の調査の為の拠点です。
過日、リアン島北部への霧のない海路が発見され、調査の結果、この地の周辺には島を覆う霧がかからないことが確認されたことで設けられました。
現在は軍の野営地があるほか、マギテック協会、魔術師ギルドの出張所などが設営され、冒険者用の宿泊所も備えています。
ディオニア周辺はある程度の安全は確保されていますが、その外は未だ未知の領域であり、冒険者の活躍が望まれています。
その他の都市†
ラプラス†
ラトカ†
ホリス伯領†
“鉱山都市”ホリス†
蛇頭海の蛇鼻諸島の中心に存在するホリス島において、唯一、港を持つ街です。
島は全域が山地となっており、平地が非常に少なく、人口の大半はこのホリスに集中しています。
ホリス島は非常に多くの地下資源を産出することで知られており、多くの鉱夫がこの地に居を構え、働いています。
島の所属はイルスファール王国であり、ホリス伯トバイアスがその運営を担っています。