魔動機文明後期、大型兵器が全盛を誇り、蛮族が地の底まで追いやられた時代。
そんな中でも突出した個体、蛮族の英雄と呼べる者たちが技術的優位を覆す事例が
度々見受けられ、魔動兵器開発者はそんなイレギュラーの存在にむしろ触発され、
奮起し、彼らのデータを積極的に収集し、解析し、対抗する試作機を開発した。

X（イクス）はそんな試作機の性能評価試験用の｜仮想敵《アグレッサー》として設計・調整された
人型魔動機――人道的見地からそういうことになった――である。
仮面や鎧で生身である｜コアパーツ《ルーンフォーク》を隠したX（イクス）は
どれほど損耗してもコアを換装すれば不死身の兵器であり続ける。
少なくとも記録上は……。

魔動機文明後期の軍需企業、アーレム・ツェントラル（Allem Zentral）社。
軍用大型魔動機を開発する大手デュンケルツァーン社に、大型兵器の性能評価試験用の
仮想敵として、X（イクス）シリーズを卸す中小規模の企業だったが、Xシリーズの性能が
高く評価され、デュンケルツァーン社との資本提携を受けて、軍用の戦闘型ルーンフォーク
Y（イプシロン）シリーズの開発に着手する。
（Xにおけるルーンフォークの非人道的利用に対する隠蔽・印象操作目的との説も）

魔動機文明後期の繁栄と平和な時代という事もあり、巨大兵器の需要は減りつつあり、
Yシリーズは人族の歩兵に代替する等身大の兵器として重用されていく。
市街警備・護衛などの柔軟性とコミュニケーション能力を必要とする任務にも対応出来るよう、
Xシリーズからソフトウェア面が大幅に改良されており、それに伴って、外観も威圧感を抑えた
スマートで優美なデザインに設計されている。

Yシリーズの高い評価を受けた同社は、後に民間向けの高級機を専門に取り扱う分社を設立。
こちらは主に富裕層をターゲットとした完全注文生産制であり、その用途は護衛・秘書・
愛玩用となっており、注文者の趣味に合わせて非常に幅広いカスタマイズに応える。