第一条　人族に与えられた命令に服従しなければならない。
　第二条　人族に危害を加えてはならない。ただし、第一条に反する場合は、この限りでない。
　第三条　前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。

　わたしはかつて、ルーンフォークらしく主に仕え、甲斐甲斐しく身の回りの世話をして暮らしていました。
　しかしあるとき、主ともども、蛮族の盗賊たちに襲われてしまったのです。
　主はその時死んでしまい、わたし自身は、戦利品の一つとして持ち帰られてしまいました。
　はじめはどうなることかと思いましたが、なんというか、わたしは、その蛮族たちと――仲良く、なっちゃったのです。

　実のところ、わたしは、元の主には死ぬほどイヤイヤ仕えていました。特にアレとかソレとかもう本当気持ち悪くて最悪でした。
　しかし、ルーンフォークとしてわたしにセットされた強烈な本能によって、わたしは人族の前では、ほとんど自我を出すことが叶わず、ただただ、言われるがままに従う人形としてしか振る舞うしかありませんでした。
　皮肉にも、主を失い（正直せいせいしました）、人族の居ない空間に放り込まれて……そこではじめて、わたしは本当の自分を表に出すことが出来るようになったのです。

　蛮族の盗賊たちは三人。
　バジリスクのくせにド近眼のグレイ。
　人を食うのが苦手なレッサーオーガのジャッロ。
　女同士ということで色々教えてくれたラミアのロゼ。

　彼らは間違いなくろくでなしの悪党で、わたしの知らないところでも、たくさん人から命もモノも奪っていたのでしょう。
　それでも、わたしにとっては、人族と過ごすよりも、彼らと過ごす時間のほうが、よほど楽しく、自由で、充実していました。

　―――結局、そんな日々も、ずっとは続かなかったのだけれど。